美を知るためのブックガイド007|あなたの蒐集を価値あるものにするための『骨董入門』

美を知るためのブックガイド007|あなたの蒐集を価値あるものにするための『骨董入門』

 

 

東京・六本木にある「古美術栗八」主人・高木孝(たかぎ・たかし)さんの著書『骨董入門』が刊行された。

 

 

高木さんは1952年新潟生まれ。20歳で上京し、グラフィックデザイナーとして高い評価を受けながら熱心に骨董蒐集を続け、1992年、40歳にしてついに古美術商を本職とした目利きだ。その後、甍堂・青井義夫さん、自在屋・勝見充男さんと共に「集芳会」という美術商専門の市場(交換会)を立ち上げ、またいち早く「ヤフオク」やインターネットを活用した販売を手掛けて成功するなど、伝統的な古美術業界において新たな時代の戦略を開拓したパイオニアでもある。またその確かな実績と面倒見の良い人柄から、後輩の美術商たちからも広く慕われ、業界の顔役として知られている。

 

 

 

 

本書『骨董入門』は、かつて古美術栗八のホームページで掲載した内容を下敷きに、あらためて「工芸青花」のブログとしての連載した記事をまとめたもので、高木氏の50年以上にわたる蒐集家・美術商としての知見を注ぎ込んだ初の著書。

 

 

 

『骨董入門』というタイトルの本はこれまでにいくつも刊行されているが、本書は高木さんが若い頃からバイブルのように親しんだ秦秀雄の『骨董入門』の系譜を継ぐもので、骨董というなんとも捉えどころない世界に向き合う高木さん自身の体験を通して、その後をゆく若い愛好家へのメッセージが綴られています。

 

 

その最大の読みどころは、高木さんの人となりと同じく「厳しくもやさしい」言葉。

「「ゼロから」としましたが、骨董蒐集の場合は、古いモノや文化に興味を持った時点ですでにゼロではなく、限りなく満点に近い状態です」

「資産価値を目的に、何の知識を持たぬまま古美術や骨董の購入を考えている方は、どうか違う分野へ投資してください」

「骨董とは結局、何でもありの世界みたいと思った方もあるでしょう。その通りです」

「真贋、審美眼、欲望、知識、経験、自尊心、虚栄心、嫉妬心、経済力、独占欲、好感、共感、反発、独創、悦楽、勝敗、失望……、人間の感情すべてを刺激するモノとの出会いであればこその骨董蒐集なのだと思います」

「もしこれから先、楽しく充実した蒐集家人生を目指すなら、絶対に返品しないでください」

「あなたの将来のためにここで申し上げておけば、どんな目利きの品でも売却時には買値の半額程度までしか見積もれません」

「骨董の蒐集とは御自身がその品に「価値」を見出せるかどうか、がすべてです」

 

など、初心者には一見厳しく刺激的な言葉が登場するが、そういった言葉をキリトリではなく、その前後の文章もあわせて読んでいただくと、著者が真摯に読者の立場に立って等身大のメッセージを伝えてくれていることがわかるだろう。
全体は35編で構成され、骨董というものをどのよう理解すれば良いか、初心者もプロも避けては通れない「真贋の森」、価値ある骨董や有意義な蒐集のためには欠かせないお金の話、「ヤフオク」やネット・SNSとの関わり方など、高木さんの実体験を通して具体的に書かれていて、実践的でわかりやすい。

 

 

 

 

 

 

骨董ファンにとって本書が何より貴重なのは、第一線で生きてきた美術商が自らの「手の内」や「業界の裏表」を誠実に明かしている点。その上で、骨董を特別な美術品として神格化するのではなく、日常の暮らしを居心地よく生きるための道具として捉え直すフラットな視点は、初心者からベテランまで深く納得させる普遍的な魅力を持っている。

 

 

 

 

 

 

また現在、本書刊行を記念した「古美術栗八:骨董入門」展という企画展が開催されている(6/6まで)。本書も掲載された品をはじめ、高木さんがセレクトした骨董が展示・販売(入札制と即売)されているほか、6月4・5・6日の最終3日間は高木さんも在廊予定なので、訪ねてみてはどうだろう。きっとファンや愛好家に囲まれているだろうが、思い切って声をかければ、きっと熱くやさしく迎えてくれるはずだ。

 

 

 


『骨董入門』
著者 高木孝
発行 2026年5月25日/新潮社青花の会
A5判/上製本/264頁/8000円+税

 


展観 古美術栗八:骨董入門
会期 開催中〜6月6日(土)
時間 12-18時
会場 青花室(神楽坂)

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